2016年8月、開発型アセットマネジメント事業を行う新会社「Japan. asset management株式会社(略称Jam)」の立ち上げを発表したリノベる。リノベーション住宅推進協議会 会長であり、元リビタ株式会社 常務取締役の内山博文氏をトップに迎え、一棟リノベーションをはじめとした新領域への展開に向けて動き始めました。

開発型アセットマネジメントとは、収益不動産を保有していたり、新規取得を検討している事業者・個人に対して、その物件を効果的に活用するための企画・運用をコンサルティングするサービス。国内にはいまだ事例の少ない、まさに新たな挑戦です。

設立のニュースから約半年。より詳細な背景や目指す世界について、ここで改めて代表の内山氏と、リノベる山下の2人に話を聞きました。内山氏といえば、押しも押されぬ、リノベーション業界の第一人者。その経験とノウハウは、リノベるにどんなシナジーをもたらしているのでしょうか?

809-01

●プロフィール
内山博文 Hirofumi Uchiyama(写真左)
株式会社リクルートコスモス(現 株式会社コスモスイニシア)を経て、1996年に株式会社都市デザインシステム(現 UDS株式会社)に入社。コーポラティブ事業の立ち上げや不動産活用コンサルティングの業務でコーディネーター、取締役、執行役員として活躍。2005年5月、株式会社リビタ代表取締役に就任し、リビタをリノベーションのリーディングカンパニーへと成長させる。2009年4月、株式会社リビタ常務取締役事業統括本部長に就任するとともに、同年5月に一般社団法人リノベーション住宅推進協議会副会長に就任。2013年6月より同協議会会長として、既存住宅市場拡大のための仕組みづくり、枠組みづくりを推進。2016年8月より、u. company株式会社 代表、Japan. asset management株式会社 代表取締役。

新会社「Jam」はいかにして生まれたか。

― Jam立ち上げのニュースから早6ヶ月。いまはどういう動きを?

内山:
東急電鉄との1号案件が順調に進んでいます。リノベる内の専門チームとタッグを組んで動かしており、第2、第3とその先も見えてきました。

― 改めて、Jam設立に至った背景を教えてください。

山下:
東急電鉄との資本提携を発表し、一棟リノベーションをはじめとした新事業への取り組みを発表して以来、当時リビタ在籍中の内山さんにいろいろと相談をさせてもらっていました。一棟案件の企画から設計・施工までワンストップで対応することをイメージしていましたが、リノベるには不動産事業の専門ノウハウを持った部隊はいません。その道のプロであり、一棟リノベーションの成功事例をいくつも手がけてこられた内山さんに、ぜひサポートしてほしいと考えていました。

内山:
そんな中で私がリビタを離れ、新たなチャレンジに踏み出すことを決めたとき、誰よりも早く声をかけてくれたのが山下さん。その思いに応えたいという気持ちは当然ありました。また、個人としてどうサポートできるかを考えられる立場になり、改めてフラットに相談に乗ったところ、思っていた以上に、私がリノベるに足りないピースを埋められるのではないかと直感したんです。

当初は東急電鉄との取り組みに特化したソリューション会社をと考えていましたが、リノベるという会社をよくよく知るうちに、もっと大きな可能性を感じるようになりました。

809-02

内山氏が直感した、
一棟リノベーションにおける「リノベる」の可能性。

内山:
リノベるといえば、区分マンションのワンストップリノベーションというイメージが強いと思うのですが、実は「都市創造事業本部」という、店舗や大規模案件のリノベーション設計・施工を専門的に担当するチームを持っているんです。私もその存在を知らなかったのですが、これは非常に大きな資産だと思います。

私自身、これまで複数の一棟リノベーション案件を“発注者”の立場で手がけてきましたが、設計・施工の部分には未だ大きな課題があると感じていました。従来の新築とは異なる、リノベーションならではの感覚を知る“気の利いた”会社が非常に少ないのです。

― 気の利いた会社とは?

内山:
“一点もの”の物件を、“一点もの”としてリノベーションしていく上で、絶対に必要となる「臨機応変な問題解決力」を持った設計事務所や施工会社ということです。

新築のプロジェクトでは機能分離がしっかりとなされ、設計は設計者、デザインはデザイナー、そのバトンをうけて施工会社が工事をする…というように、きっちりと役割分担されています。それぞれの責任範囲も明確です。極端にいえば、新築のデベロッパーは、資本さえあれば、あとは流れに乗せさえすれば建物が作れてしまう。長い歴史のなかで、それだけのインフラが出来上がっています。

一方、リノベーションは、一にも二にも“現場”です。机上では想定できない問題が現場レベルで次々と発生し、それをそのつど柔軟に解決していくことが求められます。責任区分も、設計は設計者、デザインはデザイナーという従来型の割り振りでは、おさまりきらないところが出てくる。これまでのやり方を一度かき混ぜて、再構築する必要があります。

― それを成しうる可能性を、リノベるの都市創造事業本部に感じていると。

内山:
施工部隊が中心のチームだったら難しかったかもしれませんが、もともと設計・デザインを専門に手がけてきたプロが集まっている点に強みを感じました。

リノベーションは、分かりやすく言えば「問題解決」。新築とは違い、問題があることが前提です。むしろ、それをどう解決するか考えることこそがリノベーションだと言えます。その意味で、問題解決の思考プロセスを身につけた設計者・デザイナーが揃っており、さらにそこで施工までを見ることができるチームというのは、非常に希少な存在。あとはそれぞれの意識と経験値の問題ですが、そこは私がフォローできる部分であり、これからさまざまなプロジェクトを経験することで培っていけるものだと考えています。

Jamと都市創造事業本部とが連携することにより、一棟案件に関して、入口から出口までワンストップで対応しうる機能は整います。東急電鉄さんとのプロジェクトを通じ、街づくりにどう関わっていけるかを深めていくことにより、「この街がどうあるべきか」という入口を考えたうえで、その後の設計施工までをしっかりとこなすことのできるチームを作っていきたいと考えています。

809-03

「作る」から「活かす」へ。
デベロッパーの間で高まる、リノベーション志向。

― 中長期的にみて、一棟リノベーションの市場をどう捉えていますか?

内山:
新築工事の単価の高止まりや空家問題の現状を鑑みると、リノベーション優位の時代は確実に近づいていると感じます。デベロッパーも、中長期的にはリノベーションにシフトせざるを得ないでしょう。すでに各事業者のなかでも、中期スパンでの事業投資が増えているように思います。事実、街にどうアプローチしていくかを考えつつ、物件を取得して中長期的に保有する。そうした動きが、大手デベロッパーの間で増えてきています。

中堅デベロッパーに関しても、ただでさえ新築の数が減っていく流れにおいて、リノベーションを軸にした物件活用のニーズはますます増えてくるでしょう。

― そのニーズに、Jam×リノベるのチームが応えていく、というわけですね。

内山:
そうですね。実はすでに、リノベるが各地のデベロッパー・不動産事業者さんへの法人営業をする中で、一棟案件の事業計画立案から企画内容にいたる相談を、物件仕入れの段階からいただくようになっています。

山下:
これまでは区分リノベーション関連の営業活動にとどまっていたところに、Jamというチームができたことで、BtoBの領域でも新たな展開が見えてきた。もともと想定していた以上のシナジーが生まれています。

新築のロジックにしばられないからこそ、
リノベーションを成功させることができる。

山下:
私自身、現状を見渡すと、リノベーションを新築やリフォームの延長線上で捉えてしまい、結果として面白みのないプロジェクトになってしまっているケースが少なくないように感じています。リノベーションは「何戸つくれば何%で回ります」といったこれまでのロジックでは語れない部分が多いのです。

一方、思想や文化としてのリノベーションだけではなく、“ビジネス”としてリノベーションを語るのもまた非常に難しいポイントです。このバランスがとれている数少ない存在が、内山さん。だからこそ、是が非でも一緒にやりたかった。

809-04

内山:
抽象的な話になりますが、従来型の不動産・建築ビジネスでは、売上の「かさ」をどうとるかという発想にはじまり、「ビジネスモデル」から入ることが一般的。既存のビジネスモデルという“型”を、いかに現場にあてはめていくかという考え方です。

かつてモノが足りない時代には、合理性が最も重要で、確立されたフローに沿ってプロジェクトを進めることこそが絶対だったかもしれません。しかし今、あらゆる業界がそうだと思いますが、そうしたビジネスモデルという型ではなく、「人」から入る柔軟な発想が求められていると思います。

リノベーションの対象となる物件は、前提や条件が一点一点ちがいます。地域が少し違うだけで企画内容やデザインのテイストも変えないといけない。細かい話ですが、リノベーションを成功させるには、そうした応用力と編集力が不可欠。その原点は、「人」から入ることにあると考えています。この街に暮らす人たちが困っているものは何なのか。この街に暮らす人たちのために何をすべきなのか。そこから、一つひとつ考えていくということです。

その意味では、リノベるは、区分マンションのリノベーションにおいて、目の前のお客さまのために何ができるかを考えつづけてきた会社です。それは一つの強みにしていくべきところだと思っています。

入口から出口まで、街づくりにとことん向き合える人材が必要。

― これまで区分マンションのリノベーションを担当してきたデザイナーが、一棟リノベーションにも携わるようになる…今後はそうした人材の動きも出てきそうですね。

内山:
それは大いにあり得ると思っています。リノベーションを目の前のお客さまの問題解決をする仕事だと考えると、区分だろうと一棟だろうと本質は変わりません。繰り返しになりますが、今までの既成概念を一旦崩して考えることができるかどうか。自分の専門領域や価値観を崩せない人だとなかなか難しいかもしれませんが、いまの世の中と照らし合わせて自分がいま何をやるべきか、何ができるかを考えることのできる設計者・デザイナーなら、決して難しくないと思います。

― 最後に、いま、チームに必要な人材とは?

内山:
ともにクライアントに向き合い、とことん寄り添っていける、コンサルタント・法人営業的な役割を担ってくれる方です。特にメインのクライアントである東急電鉄さんからいただいているのは、「一緒に街づくりを考えて欲しい」という声。彼らのパートナー的な立ち位置にたって、街のあり方を描いていき、実際にそこから問題解決の設計・施工へと結びつけていく。そういった素養のある方が、いま最も必要ですね。

― ありがとうございます。山下さんからも、ぜひ最後に一言。

山下:
一棟リノベーションや、そこから始まる魅力的な街づくり。これは「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に」というミッションを掲げるリノベるにとって、絶対に実現しなければいけないことだと考えています。具体的な実例も、そう遠くないうちに発表できると思いますので、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。

809-top2

 

809-topa